シンシアは作品を全力で楽しみたい!

主にカクヨムに投稿されている作品を紹介するブログ

大切な誰かを思い出すとき、あなたはその人の何を思い出しますか

あなたには何か事情があり会いたくても会えない人はいますか?

もしもそういう人がいる場合、いたとしたら、あなたはその人の何を思い出すのでしょうか。

 

はじめまして、シンシアです。

私が作品を読んで感じたことをネタバレなしで伝えていけたらなと思います。

ブログを書くのは初めてなので、お手柔らかにお願いします。

 

 

今回はタイトルに書きました問いに一つの答えを出すかのような作品である

 

加藤瑞希様の

ラストノートは切ない恋の香り』を紹介したいと思います。

kakuyomu.jp

 

 

作品について

 

登場人物は二人。

 

 

突発性揮発型存在消失症候群』という日常生活の中で自分の存在が突然消えてしまう不治の難病を患う『朝倉香』。

そんな彼女の幼馴染であり親友の『相沢いよ』。

 

物語の語り手である『相沢いよ』は幼いころから『朝倉香』といつも一緒であった。

小学校、中学校、高校と一緒に歳を重ねてきた。

目を離せば、手を離せばどこかへ行ってしまいそうな彼女の存在を確かめるようにいよは香の手を握るのであった。

消えゆく彼女にどんな思いを『相沢いよ』は抱くのだろうか

悲しすぎる架空の病気を題材に繰り広げられる二人の少女の物語。

 

ネタバレをしないようにざっくりとですが魅力を伝えていけたらなと思います!

 

突発性揮発型存在消失症候群

 

この作品に出てくるおそらく架空の病気である『突発性揮発型存在消失症候群』。

 

突然自分が世界から消えてしまう。見えなくなるのではなく消えてしまう。見た目の状況は同じかもしれませんが、後者の方は恐ろしさが倍増しますよね。消えた後確実に戻ってこられる保証は無いような気がするので、きっと良い感覚ではないと思います。

 

』は作中でプールの水の中みたいだと表現しています。

 

自分だけ水中にいるように視界はぼやけ、音はくぐもって聞こえる。

 

不安な気持ちが伝わってくる素晴らしい表現だと思います。

 

私はサッと消えるよりかは匂いのように段階的に消えていくようなイメージで読んでいました。

 

消え方はゆっくりなのですが、他の人には消えていることを感じる事が出来ないのだ、居ないと気が付いた時にはもう消えているような解釈です。

 

突発性揮発型存在消失症候群

天才的なアイデアですね。

 

朝倉香の変化

 

幼いころから難病に悩まされながらも明るく活発な様子が伺える

 

いよの方が心配性でありに振り回されているシーンが印象的なのですが、物語後半に訪れるのある変化には胸が締め付けられます。

 

徐々に明かされる病気の行く末が本当に切ない。

 

私は脳裏によぎる結末を必死に否定しながら読み進めました。

 

相沢いよの気持ち

主人公であり、語り手であるいよ

 

の病気の事を知り、気にかけてほしいと言われた時は特別な何かを任されたという嬉しさ、使命感が大半を占めていたと思いますが、と過ごすにつれて彼女のことを想うからこその一緒に居たい気持ちが大きくなっていく所が素敵だと思いました。

 

気持ちの移り変わりに関して作中で具体的には描かれていませんが、二人の様々な交流を通して想像することが出来ます。

 

少ない情報ながらもいよの気持ちになって読み進めることが出来る心情描写は必見です!

 

 

それは匂いであり、香りである

タイトルの答えにもなるような見出しを付けました。

この作品は大切な人の匂いについて重きを置いていることは『ラストノートは切ない恋の香り』というタイトルからも分かります。

 

その人の匂いを思い出せるということはその人と自分はより親密な関係にある事が伺えます。

そんな誰かが不治の病を患ってしまった時に自分であれば何が出来るか。

 

作中でいよの夢についてが語られる場面があるのですが、その夢にこの作品の良さであるなと感じました。

 

大切な人を救うために命を使う。つまりは病気の研究をして彼女の病気を解明するという答えも立派だと思います。

 

しかし、別の方法で彼女の存在をこの世界に繋ぎとめる方法もあると気づかされました。

これだけでは酷く自己中心的に感じるかもしれませんが、誰かの為に病気を研究するということも最終的には自分で決めたこと。であればより自分に合った方法でその大切な人と向き合いたい。そんな思いがあったのではないかと思います。

この作品を読み終わったときに感じた事があります。

自分が思う誰かを象徴する形を自分勝手に残す。

簡単には忘れないものを一つ作るということは大きな愛情であると感じました。

 

 

最後に

この作品には百合というタグが付けられていますが、単純に女の子同士の恋愛ではなく、大切な人と離れたくないという家族愛のような想いが込められているように感じました。

 

普段から百合作品を読まない人にもオススメ出来る作品になっていると思います。 

 

一万字弱の短編となっていますのでお時間ある方は読んでみてはいかがでしょうか。

 

最後になりますが加藤瑞稀様、とても素晴らしい作品をありがとうございました。

二人の事が大好きになりました。

 

 

是非、二人の結末を確かめてみてください。