人間そっくりな機械の人間。
アンドロイド、ヒューマノイド、ロボット、機械人形。
未来では少し見ただけでは人間のように見えてしまう機械が街中を歩いているかもしれません。
見た目だけは似ていても、臓器として存在していない人の内面。
心の存在に彼らは気が付くことができるのでしょうか。
では、それらの機械たちが理解することの出来ないであろう人間の心。
数値では再現することができない感情はあるのでしょうか。
はじめまして、シンシアです。
百合・GL作品ばかりを紹介してきましたが、今回はアンドロイドものです。
前回までと同様ですが紹介とは名ばかり、実際は特大なファンレターです。
よろしくお願いします!
今回はタイトルにあります。
機械が手に入れることの出来ない感情について、一つの答えを出すかのような作品。
めんてて様の
「依頼屋男とマシナリー・ガール ~機械は❝勇気❞の夢を見るか?~」
を紹介したいと思います。
作品について
鉄と油の匂いが鼻を突く、眠らない街──アンドロメダ・シティ。この鉄臭い街を動かしている機械の音で、夜もおちおち寝られやしない。
(作品冒頭より引用)
物語はアンドロメダ・シティという機械都市で依頼さえくれば何でもこなす『依頼屋』である男(主人公)が、シティの大企業であるパンダと呼ばれる組織から盗まれた『勇気の感情のデータ』を奪還してきてほしいという依頼を受ける所から始まります。
この依頼をこなすために、男は相棒であるマシナリー・ガールというロボットと共に機械が人間よりも優位な機械都市を駆け回ることになります。
終末感漂う世界で『勇気』を巡り繰り広げられるファンタジー作品です。
マシナリー・ガール
作品についてはなるべく自分の言葉で書きたいという思いがあり、書けませんでしたが
作品概要にはサイバーパンク系マシナリーアクション活劇とあります。
まさにこの言葉に尽きるなという作品です。
主人公の相棒的立ち位置である『マシナリー・ガール』という機械で作られた?ヒューマノイドロボットが登場するのですが、このキャラクターがとても魅力的なのです。
作中で主人公に人形(ドール)と呼ばれているのですが、この呼び方も良いですよね。
高性能な機械らしく、調査の際はとことん優秀なのです。
データに即座にアクセスできたり、索敵能力に優れていたりと大活躍です。
普段は人間らしく冷静でスマートな彼女ですが、主のピンチとなると敵の殲滅だけを実行するマシーンへとガラリと変わって血の気が多くなる感じがたまらないんです。
主の身の安全を脅かす敵には容赦がなく、主人公が停止コードを使うほどです。
この他にも主人公との会話の中にも、物語全体の中にも彼女の良さや可愛さは詰まっているので、ぜひ作品中で確認して欲しいです。
アンドロイドのヒロインが大好きな私にとってはもう刺さりまくりなキャラクターでした。
メモリ
アンドロイドキャラが好きだというのもそうですが、作中でとても好きな設定があります。
それは『メモリ』の存在です。
恐らくUSBメモリのような形をした『メモリ』と呼ばれる物体が出てきます。
本来であれば、電子データを保管するための物体ですが、この世界では食べ物がこの中に入っています。
この味覚のメモリを体に刺すことで特定の味を感じることができます。
生の食べ物は高級品らしくここに住む人々はメモリを摂取して生活しているらしいです。
凄く良くないですか?
人間たちは作り物であるデータを摂取しているが。アンドロメダ・シティの支配者である機械たちは生の食材を食べている。
機械都市の支配者が機械だからこそ、人間たちは生の食材ではなくデータを摂取させられている。
この二つの考えが浮かんできました。
どちらもちがうかもしれませんが、この『メモリ』はとても心にグッときた設定です。
この『メモリ』についてのシーンで好きなところがあります。
主人公が依頼の為に外へ出ていくときにマシナリー・ガールがコーヒーを入れたことを伝えるシーンです。
コップの中を覗きますが、そこには液体ではなく一つの『メモリ』が入っています。
コーヒーの味覚データです。
この助手的な立場のキャラがコーヒーを入れるというシチュエーションそのものがたまらないのですが、この世界にあったアレンジが効いていて好きです。
メモリを見るとうんざりとしながらも摂取をする主人公。
ドールが買ってきたというメモリ。
これに関してドールは何も言わないのですが、機械にとってメモリを繋ぐという行為など日常茶飯事であり、それこそ私達人間の食事のようにも捉えることができます。
食事を摂ることがデータを食べること。
人間にとっては異常な行為でも機械にとっては正常な行為。
そこに何の疑問を持ってはおらず、今日もコーヒーを飲んでくれたとしか考えていないようにも感じる彼女の姿が浮かんできました。(生の味が高級品であるから裕福な人でないと買えない点は置いておいて)
ここだけでも人間と機械の関係性が伺えるとても好きなシーンです。
機械が手に入れられない感情
物語が進むにつれて、勇気の感情が入ったデータを盗み出した組織の存在が明らかになっていきます。
もちろんこの組織と主人公たちは戦うことになるのですが、終盤の展開には驚かされました。
これはどうなってしまうのという展開にワクワクしながら読むことができました。
作中通して言われてきたマシナリー・ガールのある特徴が作用する組織との戦闘の場面にはとても驚かされるとともに、綺麗な設定であると感服いたしました。
なるほどと首が縦に自然に動いたほどです。
ではここからは記事のタイトルで書かせていただいた話です。
勇気とは様々なことに悩む人間だからこそ存在する感情だと私は思います。
機械なこの曖昧な気持ちは存在しません。心が、感情が、ありませんからね。
勇気とは作中で人という存在に近いデータと表現されています。
定められたことしか実行できない。
掃除ロボットは綺麗にすることしかできませんし、配膳ロボットは食事を運ぶことしかできません。
掃除ができる様に場所を整えるのも、席に運べるように皿を載せてあげるのも人間の仕事です。
人間は複数のことを実行に移すことができますよね。
そんな人はどちらかしかできない選択肢が現れたときには頭を抱えることになる。
できることが複数ある人間の特権だと思います。
勇気の決断。
人は一つしか選ぶことの出来ない選択肢に対して、数値で図ることの出来ない感情や心の揺らぎを思考を用いて感じることができます。
私はこの作品の中の『勇気』というものが人という存在にちかしいデータというのがとても腑に落ちました。
データとして数値化できる感情は存在すると思います。
それこそおいしいだとか不味いなどの感情のデータを機械が理解するのは難しくないことだと思います。
この作品を読んで勇気だけは機械に奪われることのできない感情であると気づかされました。
私がここで書いた話と直接的な関係はないかもしれませんが、この勇気という言葉と機械の関係が作品の重要なシーンでとんでもない破壊力を発揮するので気になった方は是非読んでみて頂きたいです。
最後に
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
少しでもこの作品の魅力が伝わっていれば嬉しいです。
SF的な近未来の世界観がお好きな方やアンドロイドやロボットものが好きな方におススメです。
個人的にですが、久々に質の良いアンドロイドものを読むことが出来て満足でした。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?的なタイトルに弱いんです。
引き寄せられるようにクリックしちゃいます。
ここだけの話ですよ。
皆様のおススメなアンドロイドやヒューマノイドが登場する作品も知りたいです。
Web小説でも商業でも。映画でもアニメでも。なんでも。
好きなジャンルなのでまた次の記事で会えたらなと思います。
最後になりますが、めんてて様。
素晴らしい作品をありがとうございます。
私の好きが伝わっていれば嬉しい限りです。
大好きな作品です!
めんてて様のXアカウント
シンシアでした。